徒然草 現代語訳 吉田兼好

徒然草を現代語訳したり考えたりしてみる

吉田兼好の徒然草を現代の言葉で書いたり、読んで思ったことを書いています。誤訳や解釈の間違いがありましたらぜひご指摘ください。(序段---冒頭文から順番に書いています。検索窓に、第〇〇段、またはキーワードを入力していただけばブログ内検索していただけると思います)

第八十六段 めっちゃうまいこと言いました

(平)惟継中納言は、詩歌、文章の才能豊かな人でした
生涯修行に励み、読経をして、三井寺の寺法師の円伊僧正と同じ坊に住んでたんですが、文保年間に三井寺が焼かれた時、坊の主である円伊に会って「あなたを『寺法師』と申してたけど、寺がなくなったんで、今からは『法師』と申しましょうかね」と言いました
めっちゃうまいこと言いましたな


----------訳者の戯言---------

三井寺(みいでら)っていうのは、園城寺(おんじょうじ)の通称で、天台寺門宗の総本山でして、ま、天台宗の総本山である比叡山延暦寺とはずっと揉めてたらしいです。
天台宗においては延暦寺を山門、三井寺を寺門と言うわけで、もっと言うと、「山」が延暦寺、「寺」と言えば園城寺三井寺というくらい、2大勢力だったようですね。で、三井寺は何回も山門派によって焼討ちされてます。

で、この段は、そういった意味ではかなり深刻な事態ではあるわけですね。
でもそんな時、まあ、こういう冗談というか、これ、一種の慰めでもあったんでしょう。
こういうこと言えるっていうのも、人間関係がうまくいってるからこそ、っていうのはあるでしょうね。


【原文】

惟繼中納言は、風月の才に富める人なり。一生精進にて、讀經うちして、寺法師の圓伊僧正と同宿して侍りけるに、文保に三井寺焼かれし時、坊主にあひて、「御坊をば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ今よりは法師とこそ申さめ」と言はれけり。いみじき秀句なりけり。

 

検:第86段 第86段 惟継中納言