徒然草 現代語訳 吉田兼好

徒然草を現代語訳したり考えたりしてみる

吉田兼好の徒然草を現代の言葉で書いたり、読んで思ったことを書いています。誤訳や解釈の間違いがありましたらぜひご指摘ください。(序段---冒頭文から順番に書いています。検索窓に、第〇〇段、またはキーワードを入力していただけばブログ内検索していただけると思います)

第二百三十七段 柳筥(やないばこ)に置くものは

柳筥(やないばこ)に置くものは、柳に対して縦に置くか、横に置くかは、物によるのかな?
「巻物なんかは縦向きに置いて、木と木の間からこよりを通して結びつけるんだ。硯も縦向きに置いたら、筆が転がらなくていいんだ」と、三条右大臣殿がおっしゃった
でも(書家の家系)勘解由小路家の書家たちは、かりにも縦向きに置かれることは無かったね
必ず横向きに置かれましたよ


----------訳者の戯言---------

勘解由小路(かでのこうじ)家というのは書家の家系なんですね。
第百六十段でも勘解由小路二品禪門(藤原経尹)という人が登場しました。
額を「かける」と言ったとかいう人。いや、当たり前なんですけどね。

実はここの家系って、三蹟の一人、藤原行成の子孫なんです。
さすがに私でも三蹟は知ってますから、書道界では超有名な人ですよ。その子孫たちですね。
ちなみに第百六十九段に登場した、二人の男性との恋におちたキャリアウーマン、建礼門院右京大夫もこの家の出身だそうです。
別名と言うか本名というか、「世尊寺」家とも言いまして、世尊寺流という書道理論・書風を確立した模様。しかし、後に断絶したそうです。

さて、柳筥(やないばこ)っていうのは、柳の木を三角に削って、並べて組み合わせて作った箱なんですが、さらにその蓋だけを別にして脚をつけて、図のように台にしたものも、同じく柳筥と言ったらしいんですね。

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この図では、奉書で包んだものに水引をかけたのが載っかっていますね。
ま、こういうこともしたらしい。
箱の画像のほうは、古い箱状の柳筥です。

台のほうの柳筥には、文中にあったように、巻物を置いたり、硯を置いたりしたみたいですね。
ただ、勘解由小路家の書家の人たちは横向きに置いたようですよ。
何でだ!?

で、三条右大臣って誰?
藤原定方(873-932)という人だそうです。
最終的には右大臣になった人ですから、官人としてはかなりの人なんですが、自身、歌人としても高名とか。
私はよく知りませんでしたが。

しかし兼好、この人が言ったのをまるで直接聞いたかのように書いてますが、全然、時代違いますからね。
藤原定方、これ書いてた時より400年ぐらい前の人ですから!
私らからしたら、徳川家康とか真田幸村とかが、「こう言うてましたわ」って言うのとおんなじですからね。
あぶないあぶない、だまされるとこでしたよ。


【原文】

柳筥に据うるものは、縦ざま、横ざま、物によるべきにや。「卷物などは縦ざまにおきて、木の間より紙 捻りを通して結ひつく。硯も縦ざまにおきたる、筆ころばず、よし」と、三條右大臣殿仰せられき。

勘解由小路の家の能書の人々は、假にも縦ざまにおかるゝことなし、必ず横ざまにすゑられ侍りき。


検:第237段 第237段 柳筥に据うるものは