第百七十八段 ある所の侍たちが、御所の内侍所の御神楽を見て
ある所の侍たちが、御所の内侍所の御神楽を見て、人に話してたんだけど「宝剣(草薙の剣)を、あの方がお持ちだったよねー」なんて言うのを聞いて、御簾の内側にいた女官の中のお一人が「別殿に行幸される時は、(宝剣でなくて)昼御座の御剣なんですけどね」と、こっそり教えたのは、奥ゆかしかったよ
その人はベテランの典侍だったとかってことです
----------訳者の戯言---------
やっぱり、そーいうことは、ひそやかに言うべきなんですね。
兼好法師は、ことさらあげつらうでもなく、こっそり教えてあげたのをほめているわけね。
しかし。
兼好には聞こえてるやん。
それほど「忍びやかに」言うてないやん。しっかり聞こえとりますがな。
結局、聞こえるように言うたんかよ、と。
私思うんですけど、もうちょっと言い方考えてもよかったんじゃね? って言うか、そもそも計算ずくか?
典侍というのは「ないしのすけ」と読みます。
女官ではあるんですが、女官の中でもほぼ最高位で、当時のほとんどの典侍は天皇の側室、だったようです。
内侍所というのは第二十七段にも出てきました。
【原文】
ある所の侍ども、内侍所の御神樂を見て、人に語るとて、「寶劒をばその人ぞ持ち給へる」などいふを聞きて、内なる女房の中に、「別殿の行幸には、晝御座の御劒にてこそあれ」と忍びやかに言ひたりし、心憎かりき。その人、ふるき典侍なりけるとかや。
検:第178段 第178段 或所の侍ども、内侍所の御神楽を見て ある所の侍ども、内侍所の御神楽を見て