徒然草 現代語訳 吉田兼好

徒然草を現代語訳したり考えたりしてみる

吉田兼好の徒然草を現代の言葉で書いたり、読んで思ったことを書いています。誤訳や解釈の間違いがありましたらぜひご指摘ください。(序段---冒頭文から順番に書いています。検索窓に、第〇〇段、またはキーワードを入力していただけばブログ内検索していただけると思います)

第百五十六段 大臣に就任したときのお披露目宴会

大臣に就任したときのお披露目宴会は、しかるべき所を申し受けて行うのが普通のことです
宇治左大臣藤原頼長殿は、東三条殿で開催されました
ここは内裏(皇居)だったんですが、左大臣殿が申し出られたことによって、帝はそのとき他所へ行幸されたのです
これといった縁故はなくても、女院の御所などをお借りするのが、昔からのしきたりである、っていうことです


----------訳者の戯言---------

たまに出てくる、メモみたいな段。

女院(にょいん、にょういん)というのは、天皇の母、太皇太后、皇太后、皇后、内親王などの称号だったそうです。
「なんとか門院」などというのが、よく映画やドラマで出てきますけど、あれも女院の一種らしい。

お雛様の歌で「お内裏様とお雛様~」ってありますけど、あの「内裏」って皇居のことなんですね。
ということは、正確に言うと、お内裏様とか内裏雛とかっていうのは、皇居にいらっしゃるカップル、つまり天皇と皇后、お二人の御姿のお人形、ということになります。
雛人形っていうのは「ちっちゃい人形」のことですから、そのへんがごっちゃになって、男雛=お内裏様、女雛=お雛様になったんでしょう。
現代では、雛人形がかつての「天皇皇后両陛下」をフィギュアにしたものだという認識は、さほどありませんが、憧れの理想のカップルであり、あやかりたいとみんなが思ったからこそ、ひなまつりが今まで続いてきた伝統行事でもあるわけで、残してほしい文化ではありますね。

ただ、少しだけ申し添えておきますと、御所には後宮、つまり女の園的なものがあって、天皇には正室以外にも側室が当り前にいっぱいいました。それは全然非道徳的なことではなく、むしろ世継ぎを絶やさないためにはどんどんやるべきことでした。

と、いうわけで、「お内裏様ってあんなマジメな感じなのに、不潔! 嫌ーね」とか言わずに温かく見てあげてほしいなと思います。


【原文】

大臣の大饗は、さるべき所を申し受けて行ふ、常のことなり。宇治左大臣殿は、東三條殿にて行はる。内裏にてありけるを、申されけるによりて、他所へ行幸ありけり。させる事のよせなけれども、女院の御所など借り申す、故實なりとぞ。


検:第156段 第156段 大臣の大饗は、さるべき所を申しうけておこなふ 大臣の大饗は、さるべき所を申し受けて行ふ