徒然草 現代語訳 吉田兼好

徒然草を現代語訳したり考えたりしてみる

吉田兼好の徒然草を現代の言葉で書いたり、読んで思ったことを書いています。誤訳や解釈の間違いがありましたらぜひご指摘ください。(序段---冒頭文から順番に書いています。検索窓に、第〇〇段、またはキーワードを入力していただけばブログ内検索していただけると思います)

第百二十二段 人の才能は

人の才能は、書物をよく読んでて、聖人の教えを理解してることを第一とします

次には字を書くこと、専門にまでする必要はないけど、これを習うべきだすね
学問をする時に都合いいから

その次に医術を学ぶべきだわね
自身の健康のためにも、人を助けたり、忠義と孝行の務めを果たすためにも、医術がないと実行できないでしょ

さらに次には、弓を射ること、馬に乗ること、これは六芸に出ています
必ずこれはやっておくべきだよね

文・武・医の道は、本当になくてはならないものなのだ
これを学ぼうっていう人を、無駄なことをしてるなんて言ってはいけません

そしてそしてその次に、食は人間にとって何より大切なもの
美味しく料理できる方法を知ってる人は、すごい長所があるってことだす

さらにまたまた次には、手先を使ってこまかな物を作る技は、あらゆることに役立つんだよね

これら以外のこともあるけど、いろいろなことがたくさんできるというのは、君子の恥とするところですね
詩歌を詠むのが上手で、楽器が上手いことは、優美で奥深い味わいのある分野なんで、君も臣もみんなこれを大事にするんだけど、とはいっても、今の世の中はこれができても世を治めることは、だんだんできなくなってきてるようです
金は優れてるといっても、鉄の利用価値が高いのにはかなわないことと似ているね


----------訳者の戯言---------

ツッコミどころが多くておもしろい段。

そもそも、やるべきこと多すぎです。
詰め込み教育
文学(仏教含む)、書、医学、武道(弓も馬術も)、料理、工作・工芸。
無理だろ、無理無理。
これだけのことが、(そこそこでも)全部できる人って見たことないですよ。
福山雅治でも難しいと思う。
孫さんもたぶんできないと思います。
池上さんでも、林先生も、宇治原も無理無理。

私なんか1コでもできないのに。

しかも、こんなにたくさんのことを、これくらいは最低限できるべきだよねーと言っておきながら、多能は政治家のトップとしては恥だっていうんですね。
上に立つ者はこまごましたことはやらずに、大局を知るべしってことなんだろうし、ま、これは中国の古典からひいてるんでしょうけど。
十分こまごましています、冒頭のとおりだと。

後半ではいわゆるクリエイターとか、ミュージシャンなんかはすごく尊敬もされるんだけど、政治家としてはダメっていうか「最近は次第に難しくなってるみたい」という言い方、してますね。
ってことは、昔はまあまあの歌人とか音楽家が、政治家としても活躍していたのか、ということになりますね。

たしかに昔の日本は貴族政治ですから、ええとこの坊ちゃんなんかは、子どもの時から詩歌も管弦もやってたわけで、それが大人になって政治家になることが多かったけど、最近はそういうもんでもないかなーってことかね。

で最後に書いてある「金」は何かというと、これに例えてるのがクリエイターとか、ミュージシャンとしての突出した才能、「鉄」というのは汎用的な能力、ということでしょう。

いろいろできた方がいいのか、むしろいろいろやらなくていいのか、政治家としてはどうなのか…
結論としては、何がよくて何がよくないのか、もやもやっとした感じになっています。


感想。
もっと考えをまとめて書け。


【原文】

人の才能は、文明らかにして、聖の教へを知れるを第一とす。次には手かく事、旨とする事はなくとも、これを習ふべし。學問に便りあらむ爲なり。次に醫術を習ふべし。身を養ひ、人を助け、忠孝のつとめも、醫にあらずばあるべからず。次に弓射、馬に乘る事、六藝に出せり。必ずこれを窺ふべし。文・武・醫の道、まことに缺けてはあるべからず。これを學ばんをば、いたづらなる人といふべからず。次に、食は人の天なり。よく味ひをとゝのへ知れる人、大きなる徳とすべし。次に、細工、よろづの要多し。

この外の事ども、多能は君子のはづるところなり。詩歌にたくみに、絲竹に妙なるは、幽玄の道、君臣これを重くすとはいへども、今の世には、これをもちて世を治むること、漸く愚かなるに似たり。金はすぐれたれども、鐵の益多きに如かざるがごとし。


検:第122段 第122段 人の才能は、文明らかにして