第百八十六段 吉田っていう馬乗りが言ったのは
吉田っていう馬乗りが言ったのは「馬ごとに手ごわいもんですねん。人の力では争うたらあかん、ってわかっとかんとあきませんわ。乗ろうとしてる馬をまずよう見て、得意なことと、弱点を知るべきですわね。で次に、轡(くつわ)や鞍の道具に、危ないとこがあるかどうか見て、気になるとこがあったら、その馬は走らせたらあきません。この用意を忘れへん者を『馬乗り』って言うんです。これが秘訣ですな」ってことでした
----------訳者の戯言---------
前段に続いてプロフェッショナル、エキスパートの話。
【原文】
吉田と申す馬乘りの申し侍りしは、「馬ごとに こはきものなり。人の力爭ふべからずと知るべし。乘るべき馬をば、まづよく見て、強き所、弱き所を知るべし。次に轡・鞍の具に、危きことやあると見て、心にかゝる事あらば、その馬を馳すべからず。この用意を忘れざるを馬乘りとは申すなり、これ秘藏のことなり」と申しき。
検:第186段 第186段 吉田と申す馬乗りの申し侍りしは