徒然草 現代語訳 吉田兼好

徒然草を現代語訳したり考えたりしてみる

吉田兼好の徒然草を現代の言葉で書いたり、読んで思ったことを書いています。誤訳や解釈の間違いがありましたらぜひご指摘ください。(序段---冒頭文から順番に書いています。検索窓に、第〇〇段、またはキーワードを入力していただけばブログ内検索していただけると思います)

第百七十五段③ 酒っていうのはこんな風に不愉快に思うものではあるけど

酒っていうのはこんな風に不愉快に思うものではあるけど、自ずと捨てがたいシチュエーションもあるでしょ
月の夜、雪の朝、桜の花の下ででも、のどかな気分で語り合って盃を差し出すって
これ、いろいろと盛り上がる要素だよね
退屈な日、思いがけず友だちがやって来て、酒を飲んだら、心がなぐさめられるし
そうそう馴れ馴れしくできない高貴な方が御簾の中から果物やお酒なんかを、上品そうに差し出されるのは、すごくいいもんだ
冬、狭いところで火で物を煎ったりなんかして、めっちゃ気が合う友だち同士、さし向かいでとことん飲むのは、すごくいいよねー
旅先の宿屋、野山のアウトドアなんかで「酒の肴があったらなー」なんて言いいながらでも、芝の上で飲んでるのも楽しいもんやね
すごく酒を嫌がってる人が、強いられてちょっとだけ飲むのも、とってもいいよ♡
身分の高い人が、特別に「あと一杯どうぞ。減ってませんよ」など、おっしゃるのもうれしいです
お近づきになりたかった人が飲める人で、すっかり打ち解けてきたのも、またうれしおすな

ま、いろいろ言っても、酒飲みってのは面白くて、罪のない者なの
酔いつぶれて朝寝してるところを、主人が戸を開けたら、うろたえて、ねぼけた顔のままで、細い髻(もとどり)をさらけ出し、ちゃんと着ないで着物を抱えて、足を引きずって逃げる、その裾を捲り上げた後姿、毛の生えた痩せた脛(すね)の感じが、おかしくて、それ、まさに酒飲みというにふさわしいのだよねw


----------訳者の戯言---------

また出ましたよ。
兼好法師朝令暮改。手のひら返し。ご都合主義。オポチュニズム。
あんだけ書いといて、最後にこんだけ持ち上げる? 普通。
この一貫性の無さ、どーかしてるな!

誰かに忖度してないか? 兼好よ。

そして、ここでよくわからない語、髻です。
昔は髪を頭の上に集めて束ねてたらしくて、それを髻(もとどり)というらしい。
で、それの上に烏帽子を被ったんですね、当時は。

個人的に、私はお酒飲まないので、今は原則酒席には出ないんですが、まあ、過去にはいろいろな人を見ましたよ。
ま、他人に迷惑をかけない範囲でなら、どんどん飲んでいいと思います。
できれば高い酒をね。
安酒を飲んで、人に迷惑をかけるのがいちばんよくないと思います。


【原文】

かく疎ましと思ふものなれど、おのづから捨て難き折もあるべし。月の夜、雪の朝、花のもとにても、心のどかに物語して、杯いだしたる、萬の興を添ふるわざなり。つれづれなる日、思ひの外に友の入り來て、取り行ひたるも、心慰む。なれなれしからぬあたりの御簾のうちより、御果物、御酒など、よきやうなるけはひしてさし出されたる、いとよし。冬、せばき所にて、火にて物煎りなどして、隔てなきどちさし向ひて、多く飮みたる、いとをかし。旅の假屋、野山などにて、「御肴何」などいひて、芝の上にて飮みたるもをかし。いたういたむ人の、強ひられて少し飮みたるも、いとよし。よき人の、とりわきて、「今一つ、上すくなし」など、のたまはせたるも嬉し。近づかまほしき人の、上戸にて、ひしひしと馴れぬる、また嬉し。

さはいへど、上戸はをかしく罪許さるゝものなり。醉ひくたびれて朝寐したる所を、主人の引きあけたるに、惑ひて、ほれたる顔ながら、細き髻さしいだし、物も着あへず抱き持ち、引きしろひて逃ぐる、かいどり姿のうしろ手、毛おひたる細脛のほど、をかしく、つきづきし。


検:第175段 第175段 世には心得ぬ事の多きなり