徒然草 現代語訳 吉田兼好

徒然草を現代語訳したり考えたりしてみる

吉田兼好の徒然草を現代の言葉で書いたり、読んで思ったことを書いています。誤訳や解釈の間違いがありましたらぜひご指摘ください。(序段---冒頭文から順番に書いています。検索窓に、第〇〇段、またはキーワードを入力していただけばブログ内検索していただけると思います)

第百七十五段① 何かあるたびにすぐ酒をすすめて

世の中には納得のいかないことが多いもの
何かあるたびにすぐ酒をすすめて、無理やり飲ませるのを面白いと思ってんのは、なんでやねん!て、ほんま理解できへんわ
飲まされる人の顔は、辛抱できへん感じで眉をひそめて、人の目を盗んで酒を捨てようとしたり、逃げようともするんやけど、これを捕まえて、引き留めて、無理に飲ませてしもたら、ちゃんとした人でも、即、狂人になってカッコ悪いことして、健康な人でも重病人みたいになって、前後不覚になって倒れて寝込んでしまうんや
お祝いごとのある日なんかは、びっくりすることになるに違いねー
翌日まで頭痛はするし、物も食べれず、うめき声を上げて横たわって、(生を隔てた)前世のことだったかのように、昨日のことを覚えてねーし、公私のどっちも大切な用事をすっぽかして迷惑かけちゃう
人をそんな目にあわせるってことは、慈悲の心も欠如してるし、礼儀にも反してるよな
こんな辛い目に会うた人は、恨めしかったり、残念やって思わへんのやろか
他国にこんな習慣(酒の無理強い)があるらしいって、事情を知らん外国の人がもし伝え聞いたら、ミステェェリアス!アメェェイジング!って思うに違いないな


----------訳者の戯言---------

時々出てくる長い段です。

今回は酒がテーマですね。酒の功罪について書いてます。
しかし、これだけさんざん書いているということは、言いたいことが相当あったってことでしょう。
酒、酔っ払い等々、彼はかなり嫌な思いをしたのだろうとも想像できますね。

これまでにもお酒については、第五十三段で、酔っぱらったお坊さんが足鼎っていう鍋みたいなものをふざけて被って踊ったりしてたらとんでもないことになった話もありましたし、第八十七段では馬を引くとんでもない酒乱気味の人の話がありました。
第百十七段では友だちにしたらあかん者の一つとして「酒好きな人」を挙げてますしね。

さて、訳すときに引っかかったのは「によひ臥し」の「にほふ」で、「呻吟ふ」とか「吟ふ」とか書くらしいです。
呻(うめ)くこと、だそうですね。
「呻く」っていう漢字さえ知らんかったのに。「によひ臥し」なんか、そもそもわかるわけねー。

本題の「お酒を無理やり飲ませる行為」ですが、所謂アルハラ、アルコールハラスメントですね。
最近はずいぶん少なくなってきましたけど、それでもあるところにはあるようです。
外国がどうのという話も出てきましたが、欧米では、実際ほとんど無いみたいですね。
向こうでは個人の意思が尊重されますから。
ただ、I don't drink alcohol. と最初にはっきりと表明するのが肝要だそうです。
何事もあいまいなのは海外ではダメなのでしょう。

第百七十五段②に続きます。


【原文】

世には心得ぬ事の多きなり。友あるごとには、まづ酒をすゝめて、強ひ飮ませたるを興とする事、いかなる故とも心得ず。飮む人の顔、いと堪へ難げに眉をひそめ、人目をはかりて捨てんとし、遁げむとするを、捕へて、引き留めて、すゞろに飮ませつれば、うるはしき人も、忽ちに狂人となりてをこがましく、息災なる人も、目の前に大事の病者となりて、前後も知らず倒れふす。祝ふべき日などは、あさましかりぬべし。あくる日まで頭 痛く、物食はずによび臥し、生を隔てたるやうにして、昨日のこと覺えず、公・私の大事を缺きて、煩ひとなる。人をしてかゝる目を見すること、慈悲もなく、禮儀にもそむけり。かく辛き目にあひたらむ人、ねたく、口惜しと思はざらんや。他の國にかゝる習ひあなりと、これらになき人事にて傳へ聞きたらんは、あやしく不思議に覺えぬべし。


検:第175段 第175段 世には心得ぬ事の多きなり