徒然草 現代語訳 吉田兼好

徒然草を現代語訳したり考えたりしてみる

吉田兼好の徒然草を現代の言葉で書いたり、読んで思ったことを書いています。誤訳や解釈の間違いがありましたらぜひご指摘ください。(序段---冒頭文から順番に書いています。検索窓に、第〇〇段、またはキーワードを入力していただけばブログ内検索していただけると思います)

第百五段 北側の日陰にまだ消えないで残った雪が

家の北側の日陰にまだ消えないで残った雪が、すごく凍ってて、さし寄せた車の轅(ながえ)にも霜がとてもきらめいて、有明の月(夜が明けても残っている月)はくっきりしてるけど、曇りがまったくないというわけではない、人も来ない御堂の廊下に、普通ではないと見える男が、女となげしに腰掛けて、物語する様子で、なんだか話が尽きる風でもありません

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表情やルックスなんかもすごくよくて、何とも言えない匂いがさっと香るのは、いい感じだよね
声なんかが、途切れ途切れ聞こえるのもいいもんです


----------訳者の戯言---------

まず「なげし(長押)」ですが、よく言われるのは引き戸の上の部分、鴨居の上です。
柱に垂直(つまり水平)に渡した構造材、というのが一般的な意味合いですね。
鴨居っていうのは、引き戸の上のレールのことです。敷居が下のレールです。

ただし、長押っていうのは、柱同士を水平方向につないで外側から打ち付けられてる構造材全般を言いますから、上部にも下部にもあります。地面に沿うようなのもあるようです。
ここで出てきたのは、下の方、つまり敷居の下あたりに渡された「なげし」なんでしょうね。
外廊下にそれがちょっと出ているイメージでしょうか。

この段は前段と比べると、具体性があまりないですね。さほど細かくはないです。
ということで、こっちは想像、兼好の空想だと思います。
こうだったらいいな、という感じでしょうか。

私の勝手な想像ですが、前段(第百三段)で(自分の?)結構リアルなこと書いてしまったもんだから、ごまかそうとしてるようにも思うんですよね。


【原文】

北の家陰に消え殘りたる雪の、いたう凍りたるに、さし寄せたる車の轅も、霜いたくきらめきて、有明の月さやかなれども、隈なくはあらぬに、人離れなる御堂の廊に、なみなみにはあらずと見ゆる男、女と長押に尻かけて、物語するさまこそ、何事にかあらん、盡きすまじけれ。

かぶし・かたちなど、いとよしと見えて、えもいはぬ匂ひの、さと薫りたるこそ、をかしけれ。けはいなど、はづれはづれ聞こえたるも、ゆかし。

 

検:第105段 第105段 北の屋かげに消え残りたる雪の 北の屋陰に消え残りたる雪の