第九十四段 勅書を馬の上に乗ったまま
常盤井相国(西園寺実氏)が公務に就いてた時、勅書を持った北面の武士が相国にお会いして、馬から下りたのを、相国が後に「北面の誰々は、勅書を持ったまま下馬した者です。こんな者がどうして君にお仕えできましょうか」と申されたので、北面をクビになりました
勅書を馬の上に乗ったまま、捧げてお見せするべきだったんですね
下りるべきではありませんでした
----------訳者の戯言---------
そんなルールがあったのか!
それにしても、この相国(西園寺実氏)って奴、告げ口するってどうよ。
嫌なタイプやな。
1回ミスしたぐらいで…今なら労働基準法違反なんですけどね、当時は労組もないしね。
北面というのは院の御所の警護をする部門があった場所、らしいです。御所の北側でしょうか。
相国というのは太政大臣の唐名。
第八十三段では太政大臣になれるのに左大臣で引退するっていう人が何人か出ていきましたね。
【原文】
常磐井相國、出仕したまひけるに、敕書を持ちたる北面あひ奉りて、馬よりおりたりけるを、相國、後に、「北面なにがしは、敕書を持ちながら下馬し侍りし者なり。かほどの者、いかでか君に仕うまつり候ふべき」と申されければ、北面を放たれにけり。
勅書を馬の上ながら捧げて見せ奉るべし、下るべからずとぞ。
検:第94段 第94段 常盤井相国、出仕し給ひけるに 常磐井相国出仕し給ひけるに