第七十二段 下品っぽいものとは
下品っぽいものとは
座ってるあたりに道具類が多いこと
硯に筆が多いこと
持仏堂に仏像が多いこと
庭の前の植え込みに石や草木が多いこと
家の中に子や孫が多いこと
人に会って言葉数が多いこと
神に奉納する願文に自分の善い行いをいっぱい記載してること
多くて見苦しくないのは、文車に書物が多いこと
ゴミ捨て場にゴミが多いこと
----------訳者の戯言---------
シンプル・イズ・ベストということでしょうか。
だいたい、多いのが嫌いなのね、兼好。
ところで、オチの部分ですが、ゴミ捨て場にゴミが多いのはいいことなんでしょうか?
今だってゴミの減量化や資源化が言われてるわけですからね。
それともボケですか?
とも一瞬思ったんですが、ゴミは経済状態の良否を表すものでもありますからね。行き過ぎると問題なわけですが、当時の社会においてはゴミの集積場は豊かさの象徴だったのかもしれません。
それにゴミ捨て場にゴミが集まっているのは、他に散乱しているよりは道徳的にも好ましいですから、そういったことを兼好法師は指摘しているのでしょうか。
【原文】
賎しげなるもの。居たるあたりに調度の多き、硯に筆の多き、持佛堂に佛の多き、前栽に石・草木の多き、家のうちに子孫の多き、人にあひて詞の多き、願文に作善多く書き載せたる。
多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚の塵。
検:第72段 第72段 賤しげなるもの 賤しげなる物