徒然草 現代語訳 吉田兼好

徒然草を現代語訳したり考えたりしてみる

吉田兼好の徒然草を現代の言葉で書いたり、読んで思ったことを書いています。誤訳や解釈の間違いがありましたらぜひご指摘ください。(序段---冒頭文から順番に書いています。検索窓に、第〇〇段、またはキーワードを入力していただけばブログ内検索していただけると思います)

第五十五段 家の作りは、夏を中心に

家の作りは、夏を中心に考えたほうがいいですね
冬はどんな所にでも住めます
暑い頃、悪い住まいだと、堪えられないもんですよ
庭の小川も深い水は涼しい感じがしないです
浅く流れるのがずっと涼しげですね
遣戸の部屋は、開口部が蔀(しとみ)になってる部屋よりも明るいですわな
天井の高いのは、冬寒くて、灯りも暗いです
宅建築について言うと、用の無いものを盛り込んでるのが、見ても面白くて、いろいろなことに利用できていい、というのが建築デザイン業界の共通認識でしたね


----------訳者の戯言----------

住宅論。
さすが兼好法師、幅広いです。

エアコンなかったら、夏の暑さはどうしようもないということですね。冬は着るものとか暖房とかでなんとかなるけどね。

遣戸というのは引き戸の部屋で、外に向いてる側の扉が、蔀というのはたいてい下半分が固定になってて、開けたいときには上半分を外に垂直に引っ張り上げて留めたりしてたようですね。
となると、引き戸を開放するほうが当然明るいわけですね。蔀戸は結構重たかったし、開け閉めがめんどうだから、というのもあったかもしれない。その後、日本の住宅の開口部は、扉も窓も引き戸になっていくわけで、そう考えると理にはかなっていますね。
ちなみに第三十二段で出てきた「妻戸」っていうのは玄関の扉で、どうも今で言う西洋風のドアの方式だったみたいですね。

最後のところはユーティリティ・スペースということですか。多目的スペースってことですかね。不動産用語で言うと、2SLDKとか3SLDKのSの部分、サービスルームとか納戸というようなところでしょうか。最近は書斎のようなスペースをDENなどとおしゃれ風に呼んだりもしますね。そういう感じなんかな。


【原文】

家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き頃わろき住居は、堪へがたき事なり。

深き水は涼しげなし。淺くて流れたる、遙かに涼し。細かなるものを見るに、遣戸は蔀の間よりも明し。天井の高きは、冬寒く、燈暗し。造作は、用なき所をつくりたる、見るもおもしろく、萬の用にも立ちてよしとぞ、人のさだめあひ侍りし。

 

検:第55段 第55段 家の作りやうは、夏をむねとすべし 家の作りやうは夏をむねとすべし